カリクラその1

AV| スウィートハネムーン| 映研| 張り込み| 燃えよアニメ!!| 電車が来ない


AV
ぶっ飛んだ設定なのに淡々と話が進み、そして何となく終わる。そんな華倫変漫画の代表的作品。大乱真理子と言うAV女優と三好一郎を中心に話が進み、女の思いと男のエゴが微妙に交錯する。一見、三好は自分のエゴに従い老獪に行動しているように見えるがそうではない、彼は自分の感情に振り回されているだけなのだ。幼児と一緒だ。普通感情は大人になるときに矯正されるて丸くなるのだが三好はその過程を踏まなかった。それは悲劇なのだ、三好は感情の犠牲者なのだ。三好のレイプや暴力は悲鳴であり彼の絶望なのだ。一方大乱真理子は主体性の無さがキーワードだ。主体性が無ければレールに乗ったり、常識に従いそれなりの道を歩む事が出来るが。何故か華倫変漫画には流される人間は苛烈な人生を歩む。大乱真理子もその例の一つ。しかしどんな絶望的な状況であろうと登場人物は決して絶望しない、諦めなのか、悟ってるのかは良く分からんが。はっきり言ってそんな漫画かけるのは僕が知る限り彼しかいない。彼の漫画を読んだ後、絶望的な状況に陥り号泣している漫画を見ると児戯にみえる。

スウィートハネムーン
ラブコメ。
永住許可証を貰う為、冴えない大学生と偽装結婚する東南アジアの少女の話。
作者本人は駄作と切り捨てているが、そんな事は無い。短編では中々難しいのにきっちりラブコメしてる凄い作品。セリフ回しも構成もしっかりしている。特に「処女じゃないくせにー」とかその後の「そして反省した」セリフ回し等は正直凄すぎる。どういう頭してるんだこの人。因みにナームはタイ語で「水」。

映研
岡田と言う少年が女の子の裸を見たいが為に映画を撮ろうとする作品。
特にブちぎれた岡田君が女の子を説得する下りが絶品である。岡田君の会話の暴走は理屈っぽいのだが決してロジカルではなく思いつきと豊富な知識で話を展開するので話を聞く者を当惑させる。そして当惑させられた少女は・・・ああまたしても・・・・そしていつものオチ。まあそんな感じだ。佳作。

張り込み
刑事が不可解な自殺を遂げたセールスマンの調査をするためマンションの1室で張り込みをする話。
「カリクラ」の中で唯一、オーソドックスな設定の作品。おそらく本人の中でミステリーブームが起きており、かなり力の入った作品になっている。伏線のはり方、場面展開、余談の挟み方等が非常に上手く中々良質な作品に仕上がっている。特に80年代映画を彷彿とさせる飛行船や異形の象徴たる座敷犬等この人独自の才能が随所に見られる。
因みに映画化作品、原作代は16万円、高いと見るか安いと見るかは主観である。

燃えよアニメ!!
アニメ天皇宮崎駿に憧れてアニメーターになった女性が理想と現実のギャップに戸惑いそして現実に流される作品。
作者本人は駄作と切り捨てているが安心して欲しい。駄作だ。かなり初期の時点で「もう駄目だー」と思ったのではないか?途中から手抜きの仕方が半端じゃない。正直この作品からは如何にして最後まで持っていくかそんな印象しか受けない、この作品に関しては他に何も書くことがない

電車が来ない
廃線になる電車に乗りに来た少女が帰りの電車を待つ間、奇妙な男と会話をする話。 作者は駄作と切り捨てているがそんなことはない。本人の指摘通り情景重視の作品で技量不足は痛恨だが、人が潜在的に持っている懐かしさや情緒をとても上手く描き出して出している。夕焼けや廃車、喫茶フジ、そして象徴的な花の絵。よくできている。話もスムーズ且つ上手く落としてる。オチも余韻があって良い。因みに太った男のモデルはジョン・ウェイン・ゲイシー・・・のはず。


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