華倫変評

導入| 実家| お酒| コア| コア2| 創作欲| これからの事| 番外、三好一郎について


まず、実家にお伺いして分かった事は華倫理変が亡くなったという事だ
華倫変が死んだ。チャットで知った。初めは冗談だと思っていたが、どうやら本当だと言う事がわかって、ちょっとしたパニックに陥って。悲しいと言うよりも、もうチョット複雑な気持ちが交錯して上手く感情の整理がつかなかったように思う。結局、僕は様々な事を確認したくて華倫変宅を訪れた訳であるがそれが果たしてよかったのか悪かったのか・・・・ただ行った以上は華倫変についてできるだけ記す必要がある気がするので、僕が感じた範囲で誠実に書き綴りたい。

【華倫変の実家】
華倫変の実家は大阪から更に1時間半位行った閑静な所にあった。閑静というよりも静寂さが不気味なくらい静かな所であった。あたりは山々に囲まれ自然に満ち。丁度カリクラ1巻でてくる電車が来ないやカリクラ2巻ででてくるテレフォンレディーの最終話に出て来る話の雰囲気そのまんまである。華倫変の描く背景の素地はココから生まれたのだなあと一人納得したのをよく覚えている。

まず、実家にお伺いして分った事は華倫変が亡くなったという事だ。仏壇の脇に白くて小さくて綺麗な壷がちょこんと置かれていたのだが、お姉さんの話を聞きながら、その小さな壷を眺めているとホントに亡くなったんだなあと言う事が思い知らされてなんというか凄い嫌だった。彼は体調を崩しながらもなんだかんだ言って細く長くだらだら生きつづける様な気がしていたのだがその淡い思いを打ち砕く象徴の様に思われた。彼は本当に死んだのだ。

まず初めに言っておきたいのは、断言はできないものの、華倫変は自殺ではないと言う事だ。卯月さんは日記上で華倫変のことを自殺だと言っていたが。
ご家族の発言や態度を見て判断すれば、どうやらお父さんの手伝いをしている最中に急死と言うのが真相のようである。
ご家族の話によると「しんどい、しんどいと言ってたんやけどまさかねえ、急にこんな事になるとは、若いから検査に行かなかったし」との事。自殺で無いとの根拠はこの短い談話だけでなく、ご家族の態度や喋り方からも判断してのことである。無論、まさか「自殺ですか」とは聞けないので、実際の所は不明であるが。

とりあえず華倫変が自殺ではないと何となく理解できて不謹慎な話ではあるが少しだけほっとした。
何故なら華倫変が自殺すると言うのは、なんだかある種の敗北を意味しているような気がしてならない。
それは、子供の持っている潔癖さや素朴な疑問、センチメンタリズムや視野の狭い正義感を抱えたまま現実に向き合って生きていくことはできるのか?才能があって親に資金力があって理解のあるファンや支えてくれる人がいても結局はシビアな現実には抗えないのか?華倫変が自殺すると言う事はこれらの問いに対して呆気なく答えが出されるようで非常に悲しいし悔しい。しかし自殺ではないという事は華倫変が最後まで現実と向き合ったという事だ。其れが分っただけでも少し安心した。
さて今回、華倫変の近しい方々の話をお伺いしてわかったことは、人によって大きく華倫変イメージが違うという事だ。
例えばもしあなたが働いていたとして、職場の顔とプライベートの顔は大きく違うであろうが、華倫変の場合はもっと徹底し、家族や親しい人間の前でさえも自分の全てを晒していないように感じられた。
例えばある人は、
「無口な人でしたよ、お酒が入ったら饒舌になったけど」と語り また別の人は、
「基本的には無口な人で話が合う人とはずーっとしゃっべってましたよ」と聞きまた別の人は「アノ子は余り自分を出さない子やった、うん我を出さない子やったそれは昔からそれで何時も家族の事を考えてる優しい子だった」そんな印象を与えていた。その他、困っている後輩を慮るような手紙を出したり、電話をしたり、後輩を困らせる先輩に意見したりと、華倫変が周囲に対して配慮に富んだ人間であるエピソードをいくつも聞く事が出来た。つまり彼等には自分を押し殺して他人を思いやる、そんな人物に映ったようである。

そして漫画家の卯月さんやコミックエロティクスfの岡さんに対しては泣きながらネットの誹謗中傷で日々自殺する人の惨状を泣きながら訴えかけ、両人を困らせ。

一方、ファンに関しては、非常に饒舌で(ネットや掲示板上に置いて)俺が俺がと自己主張が強くて構って欲しくてしょうがないと言った感じであり、掲示板や日記を見ても分るように華倫変は漫画家には珍しく頻繁にチャットや掲示板に降臨し、自分の持っている豊富な知識をできる限り開陳しファンとの距離を近づけ、対等に接触しようと非常に腐心していた。良く出来た人間でもアソコまで自分を正直にさらけ出せる人と言うのは中々いない。だからHP開設後、毎週、毎週飽きもせず夜毎チャットを繰り返し普通のファン以上に華倫変の事に詳しいという自負のある私でさえ、近しい方々の語る、本当に我を出さない、やりたい事をあまり言わない、無口で真面目な華倫変像と言うのは、正直、意外な印象を受けたし最後の最後までイメージできなかった。
だから卯月さんが華倫変が死んだと聞いたとき自殺と推察したのも華倫変宅にお伺いした今は、非常に頷ける気がする。それは様々な顔を持っている華倫変の顔の一面から判断した為であり、その一面自体は真実であるが其れはあくまで側面の一部であり決ッして全体像ではないだから。

【華倫変とお酒】
華倫変はもう浴びるようにお酒を飲んでいた(ような印象を受ける)それは楽しんで飲むと言うよりも酔う為に飲む。体の事なんかお構いなしに、そんな旧ソビエト風の飲み方だったように記憶する。

【華倫変のコアについて】
華倫変のコアは何であろうか?華倫変が死んだ後、繰り返し繰り返し何度も考えた。実直に家業を手伝う華倫変、肉親にすら我を出さない華倫変、後輩思いの華倫変、エキセントリックにネット上で振舞う華倫変、ファンに対し先生→信者と言う関係ではなくあくまで対等に接しようとする華倫変、卯月さんや岡さんに泣きながらネットにおける誹謗中傷の所為で日々自殺者が出つづけていると惨状を訴える華倫変。 華倫変の持っているイメージは皆バラバラであるが優しい、献身的、親切であると言うのは共通する。その共通部分こそ華倫変のコアなのではないか?僕はそんな仮説を立てた。
自分の幸せよりも他人の幸福を祈るようなそんな部分が見え隠れする。華倫変は本当に世の中全ての人に幸福に成って欲しかったのだ。華倫変の知識は余りにも偏り、頭は悪いしその力の発露仕方も漫画以外は時に未熟で独善的でファンでさえウンザリさせられるほど甘ちゃんな部分はあったし、人の誤解を招きもしたが、やはりその活動のコアはやはり献身であり他人の幸福であったと思う。そのコアの部分には余り『私』というものが存在しないと言えば言い過ぎか・・・・やっぱり言いすぎだ。しかし彼が巨大な妄想に憑りつかれ、空想に溺れながらも全世界の人々が幸福であったらと言う願いは本物であり事実である。
しかし、やはり漫画やHP運営や日々の営みでは昇華仕切れない世間に対してやりきれないさやどうしようもなさやといった物が『澱』として溜まって言ったのではないか?その悩んでもしょうがない事での心労が華倫変の寿命を縮めたのはないか?そんな事を考えて、だから、もっとこー誰かが華倫変のエゴを理解してあげて、そのエゴを上手い形で昇華してあげたらなあと今更ながら悔やまれる。
ところで、華倫変宅から帰る段になって僕が帰りの車中でふと「ファンがもう少し華倫変さんの苦痛を吸収してあげれば」といったら。お姉さんが私に対しての気遣いだろうか、こう言って下さった。「あの子は他人に対して何かを求める事は何もしなかった。本当にしなかった、うん、だからそれは大丈夫」まあ華倫変はなんと言うかそういう人なんだろう。

【華倫変のコア、その2】
華倫変はチャット中ことあるごとに「思考停止はあかんからね」やら「思考停止はまずい」等と良く語っていた。僕はその事が非常に引っ掛かっていて未熟な脳を使って随分考えた。一体誰に言っているのか?他者に対して言っているのか?華倫変が想定する他者、つまりマスコミが作り出したマス相手に言っているのか?実は一見他人に向けているように見えて実は自分自身に対して言っていたのではないか?そんな風に僕は結論づけた。もし仮にそうだとしたら何故彼は、思考停止するなと言い続けたのだろうか?
恐らく彼は自分が絶対的な強者に恭順しそうな素養と言うのを充分理解していたから、無意識の内に警告を発していたのではないか?だから繰り返し繰り返し思考停止するなと言い続けたのではないか?もっと言えば彼の描く女性達は華倫変が抱える、社会との距離感の掴めなさや、無力さや、愚鈍さの象徴では無いのか?・・・・・・ハテナ、ハテナ、ハテナそう。いつか華倫変に聞いてやろうと思った問いは全て無為に帰してしまった。
しかし僕は思うのだ。彼はやはり彼は強力なグールーを求め、その強力な存在に依存し全てを委ねたかったのではないかと?それこそ彼の本質的な願いの一つではないかと。

【華倫変と創作欲】
華倫変は漫画を描いている最中(僕が彼と一緒にチャットしてたのは丁度『高速回線は電気うさぎの夢を見るか?』を執筆中のころ)ずーっと文句をたらたら言いながら嫌々描いていた。彼は一月の大半をフラフラしてるか、HPを更新してるか、2ちゃんねるに攻勢をかけているか、そのどれかの行動ををとっていて、最後の最後でもうホント嫌々、そして、酔っ払いながらネームを切り、そしてやっつけで仕事をする。そんな態度をとっていたように感じる。いや勿論、華倫変は様々な側面を持つ男だから、ファンに見せる物とは別の顔で黙々と描いて、チャットやらネット上で語っている事はブラフで全てファンサービスと言うことも考えられ・・・無いよ。だって証拠が沢山あるもん。あれだけの事をしながら漫画を毎日描くのはそら無理だっつーの。
でも一つだけいえる事は、嫌々描いていながらも、その表現欲は非常に旺盛で「これからはネット漫画の時代じゃない?」とか「誰か絵描いてくれないかなあ、文章描くから」とかそんな事をしきりに言ってたような思い出がある。つまり華倫変は仮に漫画を描かなく成ったとしても、何らかの形で表現活動に携わっていた可能性は非常に高い。いやホント嫌々絵描いてたもんなァ面倒臭そうに。なんと言うか旺盛な表現欲(2チャンネルの行動とかやけにサービス精神旺盛な日記とか)と嫌々な絵描き、そのアンバランスさが非常に印象的だった。

【これからの事】
今回のことは華倫変に関わりを持った全ての人がショックを受けたと思う。あるのは後悔ばかり・・・肉親や親友であればもっと手を尽くせたのではないかと思い、僕は電話番号を聞きだして、直接会うことも可能であったし。僕が書いた漫画の感想や華倫変のために書いた原作(未熟!!)を見せて欲しいと頼まれながら結局見せる事が出来なかった。チャットで華倫変に親交を深めた人であればもう少し自分のメッセージを伝えたり、チャットのやりとりを何で保存して置かなかったんだろうと思うし、掲示板に書き込んでいただけの人ならば、何で一回だけでもチャットをに参加しなかったんだ悔やんだ事と思う。最近、華倫変を知った読者ならなんでもっと早く存在を知らなかったんだ思うはずである。華倫変のように若くて影響力がある人が死ぬと言う事は残された人に少なからぬ影響を与えるこれはしょうがない事だと思う。
しかし倣岸不遜を覚悟で言えば我々は幸運であったと言えないか?親しい人であれば華倫変の人柄にじかに触れる事ができたし、チャットを出来た人であれば漫画とは隋分違った華倫変の側面を見る事が出来たし、掲示板に書き込みをした人は華倫変は頻繁にレスを返していたので無視されて寂しい思いをする事は無かったはずである。そして華倫変の死後その存在知った人も華倫変の漫画は代替不能の漫画家であり独特の救済はきっと人生の支えになるはずである。それをもって人生の満足とするには余りにも切ないけど。でもそのようにするしかないと僕は思う。それにしても、さびしくなるぜ。華倫変

【番外、三好一郎について】
三好一郎彼はオフィシャルな存在だから(断定)多少差し障りの無い事くらい書くのは問題ないんじゃないかな?
まず、第一に華倫変は三好一郎を評して、高津みたいと言っていたが高津と言うより寧ろVシネマに出て来る明バイブレーヤーと言った趣である。白龍とかその当たり。彼の存在感は異様で怪しげなオーラをブンブンと当たりに撒き散らし、「ああ、なるほど、こらあ華倫変がモデルにするのもわかるや」そんな感想を抱かせる存在だ。うーむ殆どしゃっべってないしコレくらいで勘弁してくれ。それから本人がこの内容に不満であればこちらは幾らでも謝る用意はある。


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